ニューヨークでレストラン開業、まず知っておきたい5つの落とし穴

 

近年、日本食の人気がアメリカ全土で高まっており、ニューヨークをはじめとする都市では高級寿司店や居酒屋スタイルのレストラン、日本発のスイーツ店などが次々とオープンしています。こうした流れを受けて、「自社の味やコンセプトを海外で広めたい」と考える企業や個人の参入もますます増えてきました。

 

特にニューヨークでのレストラン開業は、ブランドの国際的な成長を目指す上での大きな一歩であり、競争の激しい市場に挑む価値のあるチャレンジです。

しかし、現地で成功を収めるには、ただ美味しい料理や魅力的な空間を提供するだけでは不十分。現地の法規制や行政手続きを正しく理解し、適切に対応することが欠かせません。

 

私たちが日々現場で実感しているのは、「素敵なレストランをつくるには、デザインだけでは足りない」ということです。
ニューヨークでは、営業許可、保健所や消防署の基準、建築コードといった複雑な規制をクリアしなければ、営業を開始することすらできません。
どれだけ完成度の高い空間をつくっても、法的要件を満たしていなければオープンが遅れ、最悪の場合は再施工や大幅な修正が必要になり、コストも大きく膨らんでしまいます。

 

特に初めてアメリカでレストランを開業するという方は、設計やインテリアのことには詳しくても、行政手続きや規制のことには疎いケースがほとんど。
今回はそんな方々に向けて、ニューヨークで飲食店を開業する際に「これだけは知っておいてほしい」という実務的なポイントを、わかりやすくご紹介します。

 

すし匠 ニューヨーク

Sushi Sho

 

  1. 厨房設計のポイント

まず、最も多くの方がつまずくのが、厨房の設計です。
厨房は、お店の心臓部であると同時に、保健局(DOH)の厳しい基準が最も集中しているエリアでもあります。
手洗いシンクの配置、冷蔵・冷凍庫の管理区分、ゴミ置き場と食品の動線の分離、換気フードの仕様など、ひとつひとつに明確なルールが存在します。
これらの規定を知らずにレイアウトを組んでしまうと、後からDOHに指摘され、修正工事が必要になることも。
この段階でのやり直しは、施工費だけでなく、営業開始までの時間にも大きな影響を与えます。
大きな損失を防ぐために、設計の初期段階からDOHのルールを念頭に置いたプランニングが不可欠です。

 

 

  1. バリアフリー対応

次に、日本人のオーナーが見落としやすいのが、バリアフリー対応の重要性です。
アメリカでは、ADA(Americans with Disabilities Act)という障害者差別を禁じる法律により、すべての公共空間にはバリアフリー対応が求められています。
つまり、レストランにおいても、車椅子の方が利用しやすい十分なスペースのあるトイレ、段差のない出入口、低めのカウンター席の設置などが義務付けられています。
日本であれば、スペースや予算の都合で後回しにされがちな部分かもしれませんが、ニューヨークではこれを怠ると、建築検査で通らないどころか、営業許可が下りない可能性すらあります。
ADA対応を後から取り入れようとすると、レイアウト全体を見直す必要が出てくることもあるため、設計段階から反映させることが重要です。

 

 

  1. 法規制とデザイン

内装デザインの美しさにこだわるあまり、消防法や建築コードとの兼ね合いが後回しになるケースもよく見かけます。
たとえば、ペンダントライトの配置がスプリンクラーの水流を妨げたり、天井の素材が不燃性基準を満たしていなかったりすることがあります。
また、非常口のサインが目立たなくなるようなデザインや、通路幅が法定基準を満たしていないプランも、建築コードに抵触するため、修正を余儀なくされます。
これがニューヨークのスタンダードであり、ルールを守ることでデザインと機能性の両立が可能になります。

 

 

  1. 許可申請の準備

また、手続き面でも意外と盲点になるのが、営業許可やアルコール提供許可(Liquor License)などの申請に必要な書類の準備です。
保健所や建築局への申請には、正確な設計図、設備リスト、レイアウト図などが求められますが、それらを誰が、いつ、どのタイミングで用意するのかが明確でないと、申請がストップしてしまいます。
許可の取得に時間がかかれば、それだけ開業スケジュールにも影響が出てしまうため、計画段階から「申請まで見越した設計」が必要です。
私たちが許可申請を行う際も、工事図面だけでなく、申請用の簡略図や補足資料をセットで用意し、スピーディーな許可取得を行っています。

 

 

  1. 施工業者選び

最後に、最も重要なのは、誰に施工を依頼するかという点です。
特に「日本語が通じるから安心」「知人の紹介で安くできるから」といった理由だけで施工業者を選ぶと、後々トラブルになる可能性があります。
ニューヨークでは、建築許可(Permit)の取得や保健所・消防署の立ち入り検査への対応が施工の一部として求められます。
そのため、現地のルールを熟知していない業者に依頼すると、図面通りに工事をしても法的に通らないという事態が起こり得ます。
現地での経験や行政とのやりとりに慣れている業者に依頼することで、設計から施工、営業開始までをスムーズに進めることができ、コストや時間のロスを防げます。

 

 

当社では、日本的な美意識と、現地の法規制への確かな理解を兼ね備えたチーム体制で、20年以上にわたり数多くのレストラン開業をサポートしてきました。

空間づくりにとことんこだわるお客様の思いを形にするだけでなく、「法律的に正しく、安全に、そしてスムーズに営業できること」を見据えた提案をしています。これからニューヨークでお店を始めたいと考えている方も、すでに計画を進めているけれど不安があるという方も、どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

 

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