寿司だけじゃない、“Omakase文化”が広がる理由
近年、アメリカ都市部の飲食業界では「おまかせ(omakase)」という言葉が一般的になってきています。もともとは日本の寿司店で使われてきた言葉で、「シェフに料理の選択をすべて任せる」という意味ですよね。
当社の設計施工による「Sushi Sho」や「Masa」、「Noz」など、おまかせで寿司を提供する高級すし店が人気となり、Omakaseというワードもかなり浸透してきています。
しかし、ニューヨークでは寿司に限らず、天ぷら、焼き鳥、割烹など、さまざまなジャンルの日本食店でOmakaseスタイルが採用され、人気を博しています。
おまかせスタイルの大きな魅力のひとつは、シェフがその日の仕入れや季節の食材に応じてメニューを構成するため、ゲストはその時々でしか味わえない料理を楽しめることにあります。加えて、提供の順番やペースもシェフがコントロールするため、単なる料理の羅列ではなく、食事全体としての一体感やリズムが生まれます。つまり、料理の味だけでなく、食事全体を「体験」として楽しむことができるのです。
このスタイルが人気となり、様々な日本食店で採用されています。
例えば、当社が設計・施工を担当したマンハッタンの「Tempura Matsui」では、天ぷらや季節の料理で構成されたOmakaseメニューが提供されています。
当社が設計・施工を担当したこのレストランは、ニューヨークで唯一のミシュラン星付きのてんぷら店に相応しい、落ち着いた和の雰囲気の中、目の前で揚げたての天ぷらが一品ずつ提供される臨場感のある体験が魅力です。素材の持ち味を最大限に引き出すことに加え、揚げるタイミングや塩加減など、細かな職人技が随所に感じられます。
空間デザインにも和の建築らしい温もりを取り入れ、都会の喧騒の中でも静けさを感じられる場として高く評価されています。
また、焼き鳥の分野でも、Omakaseスタイルは注目を集めています。NoHoにある「Torien」は、東京の名店「鳥しき」の姉妹店で、ニューヨークにおいても本格的な炭火焼き鳥を提供しています。
ここでは一本一本の串に合わせた焼き加減や味付けが緻密に計算されており、焼き鳥の串が出される順番も、味のバランスや食感の変化を考慮したものとなっています。したがって、単なる食事としてではなく、料理人の意図を感じながら味わう体験として評価されています。
さらに、割烹料理もOmakaseスタイルの広がりとともに人気が高まっています。
Union Squareに昨年オープンした「Kappo Sono」では、季節感を大切にした繊細なコース料理が提供されており、食材の選び方から盛り付け、器の美しさまで細部にわたってこだわりが見られます。特に、懐石料理の伝統を踏まえながらも現地の嗜好に合わせたアレンジも加えているため、和食に馴染みのない方にも受け入れやすいスタイルとなっています。
このように、Omakaseは「料理を任せる」こと以上に、日本の食文化が持つ繊細さ、職人の技、そして“おもてなし”の精神を体験できる貴重な機会となっています。
価格帯は幅広く、比較的カジュアルな80〜100ドル程度のコースから、特別な日のための500ドルを超える高級コースまでさまざま。そのため、ビジネスの接待や記念日などのフォーマルなシーンから、普段使いの食事まで、幅広い用途に対応可能となっています。
また、近年は料理に加えて、日本酒やワイン、さらにはラグジュアリーティーなどのノンアルコール飲料のペアリングもおまかせで提供するレストランが増加しています。これにより、料理と飲み物の組み合わせが調和し、食体験の完成度をさらに高めています。
中には、料理を自分で選ばないということに抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし実は、この“選ばない自由”こそがOmakaseの醍醐味とも言えます。
料理人の技術やセンスを信頼し、普段自分では選ばないような食材や味に出会える。そんな新しい発見や感動のある食体験が、現代のニューヨークでも支持されていると言えるでしょう。
ニューヨークにおけるOmakaseスタイルは、料理ジャンルの広がり、価格帯の柔軟さ、そして空間やサービスを含めた総合的な体験価値という面で、今後もますます発展していくと考えられます。
日本の“Omakase”は、忙しい日常を送るニューヨーカーにとって、少しの贅沢と新たな発見をもたらす、まさに理想的な食のかたちなのかもしれません。
参照:
www.exploretock.com/sushi-sho-nyc
YT designは、お客様のブランドやアイデンティティを建築空間に反映させ、より速くより良い方法でプロジェクトを遂行します。
レストラン・店舗の新規出店や、オフィスの移転・改修のご相談、お待ちしています!
こちらからお気軽にお問い合わせください。