Matcha 2.0 ── NYで進化する抹茶ブームの今
近年、ニューヨークでは抹茶人気が静かなブームを巻き起こしています。ただの一過性のトレンドではなく、日本の茶文化が持つ美意識や静けさを、日常生活の中に取り入れようとする動きが広がっているのです。
このニューヨークの抹茶人気を牽引しているのが、MatchafulやCha Cha Matchaといった抹茶専門店です。
Matchafulは、サステナブルなオーガニック抹茶を提供し、ナチュラル志向のニューヨーカーから高い支持を得ています。一方のCha Cha Matchaは、ピンクとグリーンを基調にしたポップなビジュアルとSNS映えする抹茶ドリンクで若年層を中心に人気を集めています。その人気に火をつけたのが、Kendall JennerやGigi Hadidといったセレブリティたち。彼女たちがCha Cha Matchaのドリンクを手にする姿がSNSで拡散され、一気に注目を集めました。
また近年、行列の絶えないショップとして話題になっているのが、NoHoにオープンした12 Matchaです。日本から取り寄せた高品質な宇治抹茶を使用し、本格的な味わいと、ミニマルで洗練された店舗デザインが特徴。SNSを通じて瞬く間に話題となり、数十メートルの行列ができるほどの人気を博しています。
日本茶専門店「Kettl」に並ぶ人々
こうした人気抹茶店舗の台頭と同時に、自宅で茶筅を使って抹茶を点てるライフスタイルも静かに広がっています。茶筅や茶碗を購入して自宅で抹茶ラテを点てる人が増えており、ホームメイド抹茶ラテは今やニューヨークのウェルネス志向の人々にとって日常的な習慣になりつつあります。中には、抹茶パウダーと茶筅を飛行機に持ち込んで、フライト中に自席で抹茶ラテを点てるという人も。
こうしたこだわりは、単なる健康志向を超えた、“日常に抹茶の儀式を持ち込む”というライフスタイルの象徴とも言えます。InstagramやYouTubeでは、「#matchamoment」や「#matchamindfulness」といったハッシュタグが人気となっており、抹茶を使ったセルフケアの時間が“ニューヨーク流の禅”として静かに浸透しているのです。
抹茶に関するSNS投稿の数々(Instagramより)
さらに最近では、ほうじ茶ラテや玄米茶ラテといった、抹茶以外の日本茶ラテも人気を集めています。香ばしさと優しい味わいが特徴のこれらのラテは、カフェイン摂取を抑えたい人々にとって、コーヒーの代替として魅力的な選択肢となっています。こうした傾向は、抹茶一強だった日本茶市場に新たな風を吹き込み、“日本茶ブレンドの時代”への移行を予感させます。
このように抹茶や日本茶は、もはや一部の嗜好品ではなく、日常生活に根ざしたライフスタイルの一部となりつつあります。日本の抹茶が世界で注目を集めているのはとても嬉しいことです。
ただ興味深いのは、これらの抹茶ショップの多くが日本人ではなくアメリカ人によって立ち上げられ、運営されているという点です。商品説明には「日本産」「ceremonial grade(茶会グレード)」といった表現が多用され、“本物感”が強調されていますが、実際には品質に関する明確な基準が存在しないため、価格に見合わない商品が提供されているケースも少なくないそうです。
だからこそ、今後、質の高い抹茶を提供する日本のブランドがニューヨーク市場の抹茶業界に参入することで、選択肢の幅がさらに広がっていくことを期待しています。そうした動きが、抹茶ブームを一過性のものにとどめず、日本文化への理解や関心がより深まるきっかけとなれば、非常に意義深いと感じています。
抹茶を通じて感じる“静けさ”と“丁寧さ”。それは、今のニューヨークという都市が求めている新しい価値観であり、私たちが手がける空間づくりにも深く通じていると実感しています。
出典:
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