今年の漢字は「戦」 -2022年を振り返る-
年の瀬が近づくこの頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。日本では、日本漢字能力検定協会が清水寺にて今年の漢字を発表しました。応募総数は22万3768票。その中から最多得票で選ばれた今年の漢字は「戦」です。今年で28回目を迎える「今年の漢字」ですが、「戦」が選ばれるのは今回で2回目、同時多発テロが起きた2001年以来だそうです。
選出の理由の多くはロシアによるウクライナ侵攻が挙げられたそうですが、2月に開催された冬の北京五輪では日本冬季最多の18個のメダルを獲得しましたし、サッカーワールドカップでの熱戦も記憶に新しく、「戦」の選出につながりました。また、多くの人が生活の中で経験している物価高や感染症などとの「戦」いもまだまだ続いています。
さて、「戦う(たたかう)」という言葉に結びつきやすい今年の漢字ですが、実はあまり知られていない読み方があるのです。
「戦ぐ」 馴染みがない読み方かもしれませんが、これは「そよぐ」と読みます。風に吹かれて草や木の葉などがかすかに音をたてて揺れ動く様子を表す言葉ですが、「戦」という字のイメージとはなかなかつながりにくい感覚があります。
「そよぐ」という言葉の由来は、戦いの場で「戦(おのの)い」て身を震わせる様子を用いて、植物が風に揺れる動きを表現したことにあるようです。中唐の詩人白居易も、詩の中で「 櫚葉戦水風涼 (棕櫚の葉は戦ぎ、水を渡ってくる風は涼しい)」と詠んでおり、戦いとは関係のない穏やかな風景を表現しています。
今年の漢字として「戦」が選ばれた理由は多々あるでしょうが、今年の戦いを振り返りつつ、間もなく迎える新年への意気込みとして、日々の暮らしの中で困難な出来事に出くわしたときも風に戦ぐ草木のように、しなやかに生きていこうという解釈をしてみたいと思います。
寒さが厳しくなってまいりました。皆様くれぐれもご自愛の上、おすこやかに新年をお迎えください。