「心機一転」? お部屋も「新気一転」
アメリカならではの感謝祭(サンクスギビング休暇)も終わり、早いもので慌ただしい「師走」に入りました。2020年はコロナに明け、コロナに暮れるという大変な年でしたが、日本でも首相が代わり、アメリカでも(おそらく?)大統領が交代し、2021年には新政権が誕生する節目の時期になりました。残念ながらここアメリカではコロナが更に爆発的に感染拡大しそうな様相で、また社会の分断もさらに深刻化しそうな状況ですので、なかなか「心機一転」という気分にはなれない方も多いのではないでしょうか?
そんな中で明るいニュースといえば、コロナ予防の幾つかのワクチン開発が急速に進み、アメリカの大手製薬会社PfizerがドイツのBioNTechと共同開発したワクチンが12月2日にイギリスで緊急承認を得たことかと思います。他にもアメリカ大手製薬会社のModernaやイギリスとスウェーデンの合弁製薬大手AstraZenecaなども有望なワクチンを開発し、承認を得るのも時間の問題かと思います。一般の人々が接種出来るようになるにはまだ時間がかかりそうですが、まさに長いトンネルの先に光が見えてきた感があります。
コロナの影響もあり、また寒い冬場の傾向としてどうしても室内に閉じこもる時間が最近長くなっているかと思いますが、密閉された部屋の中には目に見えない危険があることをご存じでしょうか。11月28日付のNew York Timesは「There’s No Better Time to Clear the Air」と題する記事を載せて、出来るだけ外気を取り込んで室内の換気を行うことの大切さを指摘しています。
大気汚染というと工場から出る煙や自動車の排気ガスなどを連想しますが、家の床や地下室、暖炉、或いは一部の家具から少しずつ有害なガスや汚染物質が室内に入り込んでいるというのです。第一は「ラドン」と呼ばれる無色・無味・無臭の放射性ガスです。我々の住むアメリカの地下では花崗岩やあのシェールガスを含む頁岩(シェール)から放出されるウラニウムやラジウムが時を経てラドンというガスになり、床や地下室から少しづつ室内に侵入しているそうです。アメリカでは、このラドンガスは喫煙に次ぐ肺がんの第二の原因になっているということです。
第二は、各種の「かび」。湿気を好む各種カビ菌は春から夏にかけて湿度が高い時期によく発生しましたが、近年は住宅環境が良くなってきて、冬でも室内は温かく、窓に結露が出来るくらいの湿度がある住宅が多く、カビは一年中発生するようになっています。この家の中のカビは、屋根の小さな雨漏りや窓、また亀裂の入ったパイプなどから侵入することが多いそうです。多くの皆さんもご経験のあるように、鼻がぐすぐすしたり、喉の痛みや目のかゆみ、皮膚疾患もこのカビが原因のことが多く、ひどいと慢性閉塞性肺疾患を引き起こす例も少なくないようです。
第三は「一酸化炭素」。一酸化炭素中毒などの言葉でよく耳にするこの無色の気体は、ガソリン、プロパン、木炭などの燃料を燃やした際に発生しますが、密閉された室内に多量に入り込むとめまいや吐き気に始まり意識不明を経て死に至ることもあります。アメリカでは年間約2万人が一酸化炭素が原因でE.R.(救急救命室)に運び込まれているそうです。
第四はVOC(Volatile Organic Compounds)と呼ばれる揮発性有機化合物です。この中にはホルムアルデヒドやベンゼンが含まれます。これらの有害物質は、室内の一部の家具やカーペット、木質の壁材や床材、塗料や接着剤から発生します。また湿度の高い室内では排出の速度が速まるともいわれています。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、これらの有害なガスや物質から身を守るために屋外の空気を定期的に取り込んで適度な換気に心がけることが重要と指摘しています。冬場は外気が冷たいため、どうしてもこの換気を怠りがちですが、天気の良い日などには皆さんも「新気一転」をされては如何でしょうか。