ハドソン川の新公園 Little Island

今年5月21日、ハドソン川沿い13丁目付近のピア54に新しい公園「リトル・アイランド」がオープンしました。今から2年ほど前にハドソン川沿いの9Aを車で走行中、巨大なコンクリート製の漏斗(じょうご)のような物体が川面から突き出ているのを見かけて、「なんじゃこれ?」と思わず二度見したのですが、その巨大漏斗こそリトル・アイランドの基盤となる鉢型の構造物「チューリップ」でした。

 

リトル・アイランドはそれぞれ形と大きさが異なる132個のチューリップを組み合わせて作った人口島ですが、埋め立て地のような平べったい島ではなく、宙に浮いている高低差がある空間、と言った方が良いかもしれません。広さ2.4エーカーの島には35種類の樹木と65種類の低木、270種類の多年生植物が植えられ、687席の屋外円形シアターと小さな舞台、遊歩道、芝生広場、売店とバスルームが設置されています。

 

上空から見ると島はほぼ正方形ですが、下から見る姿はなんとも不思議な形をしています。まったく新しいタイプのパブリックスペースとして、自然とアートの一体型体験を生み出すことをコンセプトに設計・デザインが進められたリトル・アイランドはその発想からデザイン、工法、完成まで、あらゆる点に於いてこれまでにない斬新なプロジェクトであることは間違いありません。

 

リトル・アイランドでは8/11(水)から4週間、日替わりでダンス、音楽、コメディ、詩の朗読など様々なパフォーマンスを上演する「NYC FREE」を開催します。NYのアーティスト応援を兼ねて、不思議な人口島を訪ねてみませんか?

 

入園無料
午前6時から正午までは予約不要
正午以降の入園は事前にウェブ予約のこと
https://littleisland.org/

 

ピア54/Little Islandトリビア

■ピア54は1910年から1935年までヨーロッパとNYを結ぶ遠洋定期船の出入港地として賑わい、リトル・アイランドのサウスブリッジ入口に建つ鋼鉄製のアーチは当時の客船用ゲートの名残。

■1912年、タイタニック号海難事故で救助された生存者が上陸したのもピア54。

■その後、ハドソン川のピアの多くが使われなくなり、放置、荒廃していく。70年代になり、ピア54はNYのLGBTQコミュニティ社交の場として賑わい、1986年にはダンスイベントの会場となる。やがてそのイベントはプライド・フェスティバルの一部となり現在も継続、今年は9/15~19までリトル・アイランドにて開催予定。

■1998年にNY州とNY市によりハドソン川沿いの再開発プラン「ハドソンリバーパーク」が締結され、ピア54もその一部となる。

■2012年、NY沿岸部を襲ったハリケーンサンディによりピア54も大きな被害を受ける。翌年、ディラー・フォン・ファーステンバーグ・ファミリー財団が出資し、ピア54の再開発が始動。当財団は人口島の設計・工事費のみならず、今後リトル・アイランドが公園として存続、運営していくための費用も負担することを約束、最終的な寄付総額は3億8000万ドル(400億円!)になる予定。

■設計はロンドンを拠点に活躍する建築家、トーマス・ヘザーウィックが担当。彼はハドソンヤードの特異な建物、ベッセルも設計した。

■古いピア54の名残として残っていた木造の杭は撤去せず、水生生物の住みかとしてそのまま保存。チューリップを設置するための新しい杭打ち工事は魚の回遊シーズンを考慮して工事を5か月間休止して行われた。

■チューリップにはジオファイバー工法(砂質土とポリエステルをジェット水と共に噴射・混合させ、法面を保護する工法)が施されている。チューリップ内の土壌には特殊な灌漑システムにより水を供給している。