NY市と足場の関係
NYの街を歩かれた方は、いたるところに仮囲いや足場があると気付かれた方もいらっしゃるかと思います。今回は、その話をしようと思います。
NYの歴史をさかのぼると、1835年12月16日にロウアーマンハッタンで大火災が発生し、当時は木造建築が主流だったため瞬く間に延焼し、600もの建物が倒壊したと伝えられています。それ以来、建物の外壁には石やレンガが使われる建築様式へ変わります。現在でもNY市内には築100年以上という建物が普通に存在しています。著名な建物では、Flatiron Building 1902年、 Chrysler Building 1930年、 Empire State Building 1931年、Rockefeller Center 1937年等があり、何れも竣工後100年近い年月が経過しています。
また、NY市では1965年にLPC(Landmark Preservation Committee/ランドマーク保存委員会)を設立し、歴史的建造物や街並みを保存する活動をしており、昔ながらのNYの街並みや有名な建築家の設計による建物が数多く保存されています。現在NY市で指定されている歴史的建造物には、37,500の建物、152の市街地があり、指定建物や地域での全ての改修工事にはLPCの許可を受ける必要があります。
その他に、建物の保全に関してFISP(Façade Inspection and Safety Program/ファサード検査・安全プログラム)と言うNY市条例があります。この条例では、高さ6階以上の建物は5年毎に外壁の検査を義務付けています。検査は、7年以上の経験を持つ検査官(PE, RE)により行われ、外部足場やロープ式ゴンドラを使用して行われます。検査結果(安全・安全だが補修が必要・危険)は、市当局へ報告する必要があり、補修が必要な場合は90日以内での手直しを義務付けています。建物所有者は、決められた検査を行わない場合は$1,000/月、検査報告がされない場合は$5,000/年、手直しを怠った場合は$2,000の罰金も課される仕組みとなっています。そのためNY市には至る所に足場が建てられて居る訳です。因みに、NY市では現在6,000か所の仮囲い(約100,000平米)が設置されています。
この様な訳でNY市では足場が沢山目に付くのですが、近年では在来の鉄骨フレームに緑色のべニア板とは違い、モダンなデザインの新しいタイプの足場(Urban Umbrella)も登場しており、メインの通りには街の景観と調和する足場や囲いが設置されています。下の写真はホリデーシーズンの飾り付けがされたUrban Umbrella。
何れにしろ、毎年建物外壁よりの落下物による事故が起きていますので、街にお出かけの際には落下物にも十分注意して散策をお楽しみ下さい。