Permit(建築許可)って何?取得の流れと注意点【NYC編】
アメリカ、特にニューヨークで設計・施工プロジェクトを進める際、日本の建築実務と大きく異なる点のひとつが「建築許可(Permit)」の存在です。
Permitとは、行政、つまりニューヨーク市の建築局(Department of Buildings:DOB)から発行される「この工事を実施してもよい」という公式な許可のことを指します。新築や増改築はもちろん、レストランの厨房や店舗の内装改修といった比較的小規模な工事であっても、原則としてこの許可が必要です。
日本では建築確認申請が必要なケースは比較的限定的で、構造に影響を与えない内装の改修であれば、申請を経ずに着手できることも多くあります。
一方でニューヨークでは、たとえ軽微な工事、例えば壁を一枚設置するだけのケースでも、原則としてPermitの取得が必要になります。これは、建築法規や防火・ゾーニング規制が厳格に適用されているためです。
Permit取得のプロセスは明確で、まずはライセンスを持つ建築士(またはエンジニア)が設計図面を作成します。
用途や規模によっては、建築、構造、電気、配管、消防など、複数分野の専門図面が必要になる場合もあります。
図面が完成したら、申請書類とともに建築局に提出しますが、その手続きは「Expeditor(エクスペダイター)」と呼ばれる専門の申請代行者を通じて行うのが一般的です。
このExpeditorは、DOBのシステムや審査フローに精通しており、彼らの存在があることで、複雑な申請プロセスをスムーズに進めることができます。
図面提出後、DOBの審査官が建築コードやゾーニング、消防法などへの適合性を確認します。不備や不適合がある場合には「Objection(指摘)」が返され、設計者やExpeditorが修正・再提出を行います。
図面が承認されると正式にPermitが発行され、工事に着手できるようになります。
とはいえ、このPermit取得には、時間がかかるケースが少なくありません。簡単な内装工事でも数週間、本格的な改修や用途変更が伴う場合には、数ヶ月から半年以上かかることもあります。
その背景には、審査官ごとの対応速度のばらつきや、建物の既存違反の有無、または複数部署との調整など、さまざまな要因があります。だからこそ、設計段階からPermit取得までのスケジュールを見越し、早めに着手しておくことが非常に重要なのです。
また、一度Objectionを受けると、差し戻しと再審査に時間がかかり、1回の審査だけでも数日から数週間を要することがあります。
こうしたタイムロスを防ぐためにも、建築法規やローカルコードに精通した設計チームとExpeditorを起用し、最初から正確な図面と書類を準備することが、スピードと確実性の両面で重要になります。
Expeditorは、Permit取得だけでなく、図面の整備、DOBとの調整、違反履歴の調査、現場との連携など、多方面にわたってサポートを提供してくれる頼れる存在です。プロジェクトの複雑さに応じて複数人を起用するケースもあり、彼らの力によってスケジュールが大きく左右されると言っても過言ではありません。
その一方で、注意しなければならないのは、Permitなしで工事を進めるリスクです。
もし無許可で施工が進められていたことが発覚すると、建築局からStop Work Order(工事停止命令)が即座に発行され、工事が中断されるだけでなく、違反履歴(Violation)として記録されることがあります。
さらに、罰金やビルオーナーとのトラブル、さらには営業停止や開業延期といった重大な影響を受ける可能性もあるため、「たったこれだけの工事だから大丈夫」という油断は禁物です。
こうしたトラブルを未然に防ぎ、プロジェクトを円滑に進めるためには、設計と申請の段階から信頼できるチームとともに動き出すことが不可欠です。
特に、アメリカで初めて空間づくりに関わる日本の企業やブランドにとっては、法規に精通した設計チームやExpeditorの存在が、プロジェクトの成功を大きく左右する要素となるでしょう。
ニューヨークでは「工事を始める前に許可を取ること」が徹底されており、それ自体が工事の品質や安全性を守るための仕組みでもあります。
Permitは一見手間のかかる存在かもしれませんが、裏を返せば、適切に取得することで、長期的に安心できるプロジェクト運営につながるということです。
したがって、今後アメリカでの出店や拠点設立、リノベーションを検討している方は、Permitの重要性を十分に認識し、現地制度に即したスケジュール設計を意識することが求められます。
そして何より、事前の準備と信頼できるパートナーとの連携が、成功のための大きな一歩になるはずです。
なお、当社では、経験豊富なスタッフが設計の段階からExpeditorと協力し、Permitの申請を踏まえた図面を作成。
最短でスムーズに着工まで運べるよう万全の体制を組んでおります。アメリカ進出、ニューヨーク進出の信頼できるパートナーをお探しの方はぜひ一度ご相談ください。
出典:
https://www.nyc.gov/site/buildings/industry/obtaining-a-permit.page
https://www.nyc.gov/site/buildings/property-or-business-owner/stop-work-order.page
https://www.nyc.gov/site/buildings/property-or-business-owner/plan-examination.page
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