予算超過はなぜ起こる?アメリカ工事のChange Orderを解説

アメリカでオフィスや店舗、レストランなどの内装工事を進める際、「契約した金額から工事費が増えてしまった」という話を耳にしたことはありませんか。

 

もちろん、十分な計画を立てていても、すべてのプロジェクトで追加費用をゼロにすることは簡単ではありません。

しかし、アメリカの建設プロジェクトでは、日本以上に「Change Order(チェンジオーダー)」という仕組みが一般的であり、これを理解しているかどうかで、予算管理のしやすさは大きく変わります。

 

今回は、Change Orderとは何か、なぜ発生するのか、そして予算超過をできるだけ防ぐためのポイントをご紹介します。

 

 

 

Change Order(チェンジオーダー)とは?

 

Change Orderとは、契約締結後に工事内容や契約金額、工期を変更するための正式な手続きです。
日本では「追加工事」や「設計変更」と呼ばれることが多いですが、アメリカでは契約済みの工事内容からの変更が発生する場合には、「Change Order」として追加料金(場合によっては減額)にて対応することが一般的です。
つまり、着工前には予測できなかった問題が発生した場合や施主からの変更希望があった場合などに、柔軟に対応するための手段となります。
ただし、Change Orderが増えれば、その分コストや工期に影響が出る可能性があります。そのため、できるだけ発生を抑えることが、プロジェクト全体の成功につながります。
特にアメリカでは契約内容を重視する商習慣が根付いており、工事内容の変更は原則としてChange Orderとして扱われます。日本とは異なり、契約内容がプロジェクト管理の基準になる点を理解しておく必要があります。

 

 

なぜChange Orderが発生するのか?

 

では、どのようなケースでChange Orderが発生するのでしょうか。

 

1. デザインや仕様の変更

 

最も多い理由の一つが、工事開始後の設計変更です。
例えば、
• 会議室をもう一つ増やしたい
• 壁材や床材のグレードを変更したい
• 家具に合わせてレイアウトを変更したい
といった要望が工事途中で出てくるケースです。
変更自体は珍しいことではありませんが、一つの変更が電気、空調、消防設備など複数の工事に影響することもあり、結果として追加費用が発生します。

 

 

2. 現地調査では分からなかった既存設備の問題

 

既存ビルの内装工事では、解体して初めて分かることも少なくありません。
例えば、
• 配管や配線が既存図面(as-built図面)と異なっていた
• 想定より設備が老朽化していた
• 隠れた部分に補修が必要だった
といったケースです。
特にニューヨークには築年数の古い建物も多く、家主から提供される図面が最新の状態になっていないことも珍しくありません。
こうした状況では、設計変更や追加工事が必要になる場合があります。

 

 

3. Permit(建築許可)や行政からの指摘

 

以前の記事でもご紹介したように、アメリカではPermit取得や各種検査が重要なプロセスです。
Permit審査や検査の過程では、
• 非常口サインの追加
• 消防設備の変更
• ADA(バリアフリー)対応の見直し
などを求められることがあります。
こうした行政からの指摘による変更は、契約後に発生し、かつ当初の契約スコープや見積もりに含まれていない場合、Change Orderとして処理されるケースがあります。
そのため、アメリカのプロジェクトでは「Permitや検査で何が指摘される可能性があるか」を契約前にどこまで織り込めるかが、予算管理上の重要なポイントになります。

 

 

4.家主やビル管理会社からの追加要望

 

商業ビルでは、オーナーやビル管理会社独自のルールが設けられていることがあります。
例えば、
• 指定メーカーの設備を使用する
• 共用部の養生方法を変更する
• 夜間工事へ切り替える
など、契約後に新たな条件が追加されるケースもあります。
これらも工事内容や工期に影響するため、追加費用につながることがあります。

 

 

このように、一つひとつのChange Orderは小さな変更でも、複数回重なることで当初予算を大きく上回るケースがあります。

そのため、アメリカのプロジェクトでは「Change Orderをいかに管理するか」が、予算管理の重要なポイントとなります。

 

 

Change Orderを減らすためのポイント

 

Change Orderを完全になくすことは難しいものの、事前の準備によって発生を減らすことは可能です。

 

1. 設計段階でできるだけ仕様を固める

 

レイアウトはもちろん、床材や照明、サインなど、後から変更しやすい項目ほど、できるだけ設計段階で決定しておきましょう。
一見工事自体とは切り離して考えられる家具についても、「後で考えよう」としてしまうと、実際に家具を配置する段階でコンセントの位置や照明計画、壁の補強などを変更しなければならないケースもあります。
工事が始まってからの変更は、複数の業者が関わる作業となるため、費用だけでなく工期にも影響する可能性があります。

 

2. 現地調査を十分に行う

 

特に既存ビルの改装では、建物の状態を事前にどれだけ把握できるかが重要です。
設備の老朽化や図面との相違などは、工事が始まってから判明することもありますが、現地調査や設備確認を丁寧に行うことで、多くのリスクを事前に把握できます。
ニューヨークのように築年数の古い建物が多い地域では、調査に時間をかけることが結果的に予算超過の防止につながります。

 

 

3. 設計と施工が早い段階から連携する

 

設計と施工が別々の会社で進む場合、「図面上では問題ないが、実際には施工が難しい」といったことが工事開始後に判明することがあります。
施工チームが設計段階から参加していれば、施工方法やコスト、工期を踏まえたアドバイスができるため、着工後の設計変更を減らしやすくなります。このような理由から、設計と施工が連携できる体制では、着工後の変更を抑えやすいというメリットがあります。
また、Permit取得やビル管理会社との調整も早い段階から見据えて計画できるため、想定外の変更リスクを抑えることにもつながります。

 

 

4. 予備費(Contingency)をあらかじめ見込んでおく

 

どれだけ綿密に計画しても、既存建物の状態や行政からの指摘など、完全には予測できない変更が発生することがあります。
そのため、一般的には、プロジェクトの内容や建物の状況に応じて、工事費の一定割合をContingencyとして見込むケースもあります。
「予算を余らせるため」ではなく、「想定外の事態が起きてもプロジェクトを止めないため」の予算として考えておくことで、変更が発生した際も落ち着いて対応しやすくなります。

 

 

ここまで読むと、「Change Orderはできるだけ避けるべきもの」と感じるかもしれません。しかし、実際にはそうとは限りません。

プロジェクトを進める中で、既存建物の状況によっては、安全性や法令順守のために変更が不可欠なケースもありますし、より良い店舗づくりやオフィスづくりのために変更が必要になることもあります。
重要なのは、契約前にしっかりと準備することで、不要なChange Orderの頻発を避けることです。

 

Change Orderそのものは、アメリカではごく一般的な契約管理の仕組みです。
一方で、設計変更や準備不足によるChange Orderが増えると、予算やスケジュールへの影響も大きくなります。
だからこそ、設計段階で仕様を整理し、現地調査を十分に行い、関係者間で早めに意思決定を進めることが、結果として不要な追加費用やスケジュール遅延を抑えることにつながります。

 

アメリカでのオフィス開設や店舗出店では、日本とは異なる商習慣やプロジェクトの進め方を理解しておくことも成功のポイントの一つです。

設計・施工会社と早い段階から情報を共有しながら計画を進めることで、不要な追加工事や予算超過のリスクを抑えやすくなるでしょう。

 

 

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